約 845,775 件
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/151.html
これから ◆C0vluWr0so 夜が更けていく。 いや、どちらかといえば朝に近づいている、といった方が正しいだろう。 モニターに映る数字が、午前三時を少し過ぎたことを教えてくれる。 この殺し合いが始まってからもう半日。まだ半日。 エクセレンが死んでから――半日だ。 単純な気疲れもあったけれど、それは些細なこと。この感情は……この気持ちは、どう表現すればいいのだろうか。 定まらない、というのが一番近いような気がした。 定まらない。何を為すのか。何処へ行くのか。誰を頼るのか。 まるで半身を失ったかのような感覚が、苛立ちと虚しさを呼び起こしていく。 ……思っていたよりも、重傷だな。 あのおちゃらけた態度が、気を和らげる軽口が、愛嬌に富んだ笑顔が、自分の中で大きな存在になっていたことを再確認する。 兵士として軍に従事している以上、いつまでも二人で無事に生きられるという保証など無いと分かっていたはずだった。 だが、あの大戦を終わらせた後、慢心とも傲りともつかない何かが生まれていたのは確かだ。 「中尉、バルキリーの補給も終わりました」 取り留めもない思考が、カミーユの声に遮られる。 補給を先に済ませ、カミーユの補給中はファルケンで警戒しておくと決めたのは自分だ。 しかし無意識のうちに周囲への警戒を怠っていたことに気づき、心中で自らを叱責する。 「それで、一つ報告しておくことがありまして……」 「どうした。何か不都合でもあったのか?」 「ええ。バルキリーの補給は確かに終わりました。――ですが、補給が行われなかった武装があります」 「何だと? ……機体の一部か?」 ファルケンの補給を済ませても、翼の欠損部まで修復されることはなかった。 補給される物資は、あくまで機体の動力エネルギーと消費弾薬のみらしい。 ならば、機体そのもので攻撃する武装――例えばアルトアイゼンのリボルビングステークのような――は、機体の欠損とみなされ、修復されることはないのではないだろうか。 そう見当をつけての言葉だったが、 「違います。武装名は反応弾。つまり――『核』です」 「……!」 カミーユの返答は、こちらの予想を超えるものだった。思わず手に力がこもる。 「……理由は分かるか?」 「あくまで予想の範疇ですが……元々この機体は、D-6に放置されていたものです。 パイロットが埋葬されていたことから、他に同行者がいたことは確実でしょう。 もし、その人物が反応弾だけを持ち去っていたなら……」 「消費されていない弾薬は補給されない……ということだな」 それはつまり、反応弾を、核を持った人物が何処かにいる可能性が高いということだ。 その同行者に関するユーゼスの推察は聞かせてもらっている。 バルキリーのパイロットだけを裏切りながら、あくまで協力者としての態度は崩さずに他の誰かと共に行動する、潜伏型の殺人者。 その殺人鬼が勝ち残りを狙っているのなら、反応弾は大きな武器になるはずだ。 使える状況にあれば、生き残っている参加者全てを殺すことさえ可能なのだから。 「バルキリーから得た情報によれば、反応弾は威力が高すぎるために通常戦闘での使用はほぼ不可能ということですが…… それでも注意は必要でしょうね。こんな時なんだ、何があってもおかしくありませんから」 そう言いながら目を伏せるカミーユを見ながら、キョウスケはユーゼスの言葉を思い出していた。 『道中にこれも取ってきて貰おうか。できれば新鮮なやつが良い』 この言葉が意味するものは当然分かっていた。 ――カミーユを殺し、首輪を回収しろ。 どう動くのか見極めた上で、キョウスケ=ナンブという男の真価を判断しようとしているのだろう。 ユーゼスは、確かに能力もある。が、目的のためならば手段は問わないという姿勢があるのも確かだ。 おそらくあの男は、自分以外の全ての人間をチェスの駒程度にしか考えていない。 そして自分は――どう動く? カミーユを殺すのか。それとも何も気付かなかった振りをし、凡愚を気取るか。 あるいは、ここでカミーユと共に、ユーゼスから逃げるのか。 「カミーユ。俺も、お前に話しておきたいことがある」 キョウスケは、あえてカミーユにユーゼスの言葉を伝えることにする。 それは残酷な言葉。けれど、避けることの出来ない言葉だ。 カミーユには、自分に向けられた悪意を知る義務がある。 聞いた上で、カミーユが判断しなければならない。 「ユーゼスは……お前を殺すつもりだ」 「――! 何なんだよ……そんなに人殺しが好きなのかよあんた達は!」 モニターに映るカミーユの顔色がみるみる変わり、その瞳にはキョウスケに対する敵意が宿っていく。 カミーユの呟きには、疑問と怒りが混ざっている。突然のキョウスケの言葉に混乱し、順応することが出来ない。 だが……だからといって、キョウスケは言葉を止めるつもりは無かった。 「ユーゼスはこう言った。『首輪を取ってこい』とな。 意味は明白だ。だからこそ俺はお前に聞きたい。……どう動く、カミーユ=ビダン」 「殺すと言われて……簡単に殺される人間がいるものか。 貴方が僕を殺すというならみすみすやられるつもりはありませんよ」 「俺にはお前を殺すつもりはない。……だが、ユーゼスは別だ。 あの男は、利が無いと判断すれば、容易く他者を切り捨てるだろう。 殺される危険性があると分かった上で……お前は俺たちに付いてくるのか?」 害を為すつもりはないと聞いて、カミーユの顔から険が取れる。 キョウスケにはカミーユを殺すつもりはない。死なせるつもりもない。 だが、このままユーゼス達と行動することは、カミーユにとってプラスにはならないと判断した。 カミーユが基地から離れ、単独行動をするのなら、このまま別れるつもりだった。 「……中尉。それはつまり、僕を置いていく、ってことですか? 冗談じゃない。付いていきますよ、僕は。 ……突っかかって反発するだけで、それで上手く変わるなんて思える程僕は馬鹿じゃない。 大人には、僕たち子供を導く義務がある。ベガさんはそう言ってくれました。 だから……貴方がそんな大人なのか、僕は確かめたいと思う。 ゼクスさんやカズイを殺した貴方が、何を考えているのか……僕は知りたい」 そう言うカミーユの瞳は、強い。迷いながら……それでも、確かなものを探そうとする意志を感じさせる目。 年端もいかない少年――カミーユの魂は殺し合うには脆すぎる精神だ。 だが、カミーユは今、自分の心を少しずつ固めようとしている。少年から、戦士へと羽化しようとしている。 ……カミーユは、強くなる。キョウスケにそう思わせるだけの可能性を、少年は秘めていた。 「……それがお前の決断なら、最後まで貫け。 ただし……俺はベガほど甘くはない。付いてくるのなら必死で付いてこい。それが条件だ」 「……はい! なら……ユーゼスは一体どうするんですか?」 「ユーゼスには、適当な言い訳をしておく。だが、この先ユーゼスが不必要に他者に危害を加えるようなら……俺は、ユーゼスに容赦するつもりはない。 カミーユ、お前も注意を怠るな。ユーゼスが何時動いても対処出来るようにしておけ。 まずはこれから基地へ帰投する。問題は、その後だ。 俺たちで四人だけでは戦力としては少なすぎる。分の悪い賭けは嫌いではないが……無謀と勇気は全く別のものだ。 アインストに反逆する人間は他にもいるはず――出来る限り早く合流するぞ」 そして、ノイ=レジセイアを再び倒す――そう言いかけて、キョウスケは口を閉じた。 その後、自分は一体――どうするつもりなのだろうか。 エクセレンはもういない。今はそのことが――とても寂しいことだと思えた。 【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルⅡ(マクロス7) パイロット状況:良好、マサキを心配 機体状況:良好、反応弾残弾なし 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:基地へ戻る 第二行動方針:マサキの捜索 第三行動方針:味方を集める 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊 備考:ベガ、キョウスケに対してはある程度心を開きかけています】 【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ビルトファルケン(L) (スーパーロボット大戦 OG2) パイロット状況:頭部に軽い裂傷、左肩に軽い打撲、ユーゼスに対する不信 機体状況:胸部装甲に大きなヒビ、機体全体に無数の傷(戦闘に異常なし) 背面ブースター軽微の損傷(戦闘に異常なし)、背面右上右下の翼に大きな歪み 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:基地へ戻る 第二行動方針:首輪の入手 第三行動方針:ネゴシエイターと接触する 第四行動方針:信頼できる仲間を集める 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?) 備考:アルトがリーゼじゃないことに少しの違和感を感じています】 【二日目 3 20】 BACK NEXT 心、千々に乱れて 投下順 何をもって力と成すのか 決意と殺意 時系列順 『未知』と『道』 BACK NEXT 心、千々に乱れて カミーユ Withdrawal Symptoms 心、千々に乱れて キョウスケ Withdrawal Symptoms
https://w.atwiki.jp/aru2007/pages/11.html
夜長人別館 Wikiとブログってどっちが更新楽なんだろう、と思いつつ、実は結構タグ打ちも好きです。 某所で、Wikiで小説を書いている人がいたので、ブログから乗り換えました。 このWikiのご説明 管理人 ARU 中身 文章オンリー(当たり前) メニュー TRPG ソードワールドリプレイ? ダブルクロスシナリオネタ? ブレイドオブアルカナ聖書? 別ページ 夜長人本館 二次創作メイン。 418 I'm a teapot! 旅行記メイン。 もう一個くらい増えるかも。
https://w.atwiki.jp/atenza/pages/313.html
【作品名】スーパーロボット大戦Z 【ジャンル】ゲーム 【共通設定・世界観】 世界観は無限の平行世界と、ある事象に生じる可能性分岐により発生する新たな世界の多元+α 太極:多元宇宙の全てを司る意思 源理の力(オリジン・ロー)もこれに属する力だと思われる 亜空間:この空間内だとバルディオスの移動速度は無限速になる(設定) なお、テンプレメンバーは亜空間内の戦闘でバルディオス移動に反応できたり攻撃を避けれる奴と同等以上の反応速度 オーバースキル:超能力のようなもの時間停止や読心能力など使用者によって異なる スパロボZのマス計算は最大ユニットの惑星サイズのゴーマ、一マス12000kmで計算 共通テンプレ:ソルグラヴィオンは惑星破壊可能な攻撃力で、他のテンプレメンバーもそれと同等の威力の攻撃力(効果範囲も惑星サイズ) オーバーデビルの攻撃速度は無限速反応でも避けない速度 オーバーデビルはあらゆる物を停止させるオーバーフリーズが効かない 【名前】オーバーデビル 【属性】意思を持つオーバーマン 【大きさ】50mほど 【攻撃力】オーバーフリーズ:詳細は特殊能力 【防御力】惑星破壊の4倍には耐えられる 【素早さ】反応及び戦闘速度は無限速 移動速度は約マッハ4075 【特殊能力】宇宙空間戦闘可能 オーバースキル オーバーフリーズ:物質や精神、成長や進化、ブラックホールまで有形無形問わずあらゆる物を停止させる能力 常時半径半径60000kmに展開し任意で半径72000kmの範囲攻撃も可能 一分間に20%の肉体再生が可能 【長所】オーバーフリーズ 【短所】それ以外 【戦法】オーバーフリーズ 【備考】気力150状態(オーバーフリーズ常時展開)で参戦 833 :格無しさん:2009/06/19(金) 10 20 27 オーバーデビル考察 ○~真ゲッター 停止勝ち ○ソル~キングゲイナー 攻撃のオーバーフリーズは効かないが常時は効いてる ×エンペラー 追放負け ×ライディーン 宇宙破壊負け エンペラー>オーバーデビル>キングゲイナー
https://w.atwiki.jp/uncyclopediamabiwiki/pages/1009.html
サイトポリシー あんさいくろぺでぃあマビノギ Wiki( 以下「当サイト」)は主にWikiという複数人が共同でサイトを構築していくシステムで作られています。 当サイトの構築に参加する方( 以下「編集者」)はサイトポリシーに従って編集をお願いします。 出所や算出、計測方法が不明なデータは掲載不可とします チート、ツールの使用に関しての記事、LINKは管理者の権限において記述を禁止いたします。 マビノギクライアントに関して解析したと思われる記事、LINKは管理者の権限において記述を禁止いたします。 投稿された旨がありましたら、管理人までご連絡ください、個別に対処いたします。 基本的には、放置(荒れるから)、管理人側で対処という流れのスタンスを取りたいと考えています。 情報について あんさいくろぺでぃあマビノギ Wiki管理者( 以下「管理者」)は、当サイトに掲載する情報について様々な注意を払っておりますが 内容の正確性、有用性、安全性、その他いかなる保証を行うものでもありません。 当サイトに掲載されている情報は、あくまでも掲載時点における情報であり、時間の経過により掲載情報が実際と一致しなくなる場合があります。 管理者は当サイトの情報を利用した結果生じた損害について、一切責任を負いません。 あくまでご自身の責任においてご利用ください。 情報の保存 間違った情報でない限り基本的に情報は残すように編集者は配慮をお願いします。 他の人が書いた情報はなるべく保存する 以下の理由に該当する場合は削除してもよい。 重複 関係のない内容 無意味な記述 明らかに不正確である 反映済 ネタバレ情報について ゲームの楽しみ方は人により違いますので、 不本意に閲覧しなくてすむような配慮をお願いします。 例えば、以下のような方法があります。 注意書きを挿入する 別ページにする 通常では閲覧できないように細工する このように 見えなくする 方法もあります。 情報の真偽判断、情報の使用は自己責任にてお願いします。 不具合だと思われる情報について 当サイトでは不具合だと思われる投稿も未確認情報として扱います。 ネタバレ同様、不本意に閲覧しなくてすむような配慮をお願いします。 ※情報によってはゲームサーバーに深刻なダメージを与える可能性がありますので 記事を削除させていただく場合もあります。 問題発生時 問題発生時におけるエスカレーションは下記の順番に従う。 投稿者及び編集者 ↓ 管理者 ※管理者への連絡は、上部ツールバーのツールこのWIKIの管理者へ連絡にてお願いします。 編集合戦 編集合戦になりそうな場合は、管理者がページを保護する場合があります。 大規模な編集 大規模な編集を行う場合は以下の項目を厳守する 着手するまでに十分な時間をとる 編集作業における影響範囲を考慮する 中長期的な運用を考慮する 管理者の了解を得る Nexonマビノギチームへ投稿内容の確認について 基本的に管理者は、Nexonマビノギチームへの問い合わせは行いません。 投稿可否の判断がつかない場合はフォーラムにて議論されるか、Nexonマビノギチームにお問い合わせ下さい。 Nexonマビノギチームから管理者に、記事の削除依頼があった場合は速やかに対応いたします。 ダウンロード支援ツールの使用は禁止します。 管理者は利用者の承諾を得ることなく必要に応じてサイトポリシーの変更できるものとします。
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/286.html
キラ ◆vQm.UvVUE. どこからともなく殺し合いの場に似つかわしくない声が聞こえてきた。 『アー、アー、ただいまマイクのテスト中ですの。…こほん…最初の定時連絡の時間となったので放送を 始めますの。まずは死んでしまった人たちの報告からですの…』 …エクセレン=ブロウニング …メルア=メルナ=メイア …グ=ランドン・ゴーツ …ラクス=クライン 気絶したジョナサンをつれて、 なんとか補給ポイントに辿り着き一息ついたキラに待っていたのは信じたくない現実だった。 ラクス=クライン、彼がよく知る少女。 恋人、そう言える関係だったかもしれない少女。 無論、考えられる事ではあった。 こんなところで死んでいい人じゃなかった。 彼女はここでは明らかに無力だ。 最初に会った人間がもしもゲームに乗っていたなら、彼女は格好の的だっただろう。 分かっていたはずだった。 乗らない方もいますのでやる気を出してもらうために ご褒美のことを説明いたしますの。ご褒美は、死んでしまった方を生き返らすことから世界の改変まで 望むがままですの。なので、みなさんちゃきちゃき頑張って欲しいですの』 「え?」 今の放送はなんと言ったか。 死んでしまった者を生き返らせる。世界の改変? ラクスを、そしてフレイを思い出す。 もしも自分が優勝したのなら・・・・・・ ラクスやフレイを生き返らせ・・・そして彼女達に戦争の無い平和な世界を見せてあげられる。 彼女達の父親だって生き返らせてあげられる、ついでにトールも。 「・・・・・・でも」 だからといって、自分がこのゲームに乗ってラクスのような力のない人達を殺して、 それでラクスが生き返っても彼女は喜ぶだろうか。 いや、大丈夫だ、自分が優勝したらここで死んだ人達も生き返らせればいい。 そして、争いや犯罪の無い平和な世界を作るんだ! 気絶しているジョナサンを横目に見る。 今なら簡単に・・・ そう思ったが止めた。 流石にここでたった一人で最後まで生き残るのは不可能だろう。 幸い、ジョナサンは気絶していてこの優勝商品を知らない。 だったら最後まで付き合い、最後の最後で不意をつけばいい。 大丈夫だ、すぐに生き返らせられる。 そうだ、先程闘った、あのもう一つの戦艦も利用できるかもしれない。 「ラクス、待っていてね、僕がすぐに生き返らせてあげるから」 キラは気付かない、自分の思考がラクスの死によって狂っている事を。 その証拠に彼はラクスの死に涙を流す事も悲しむ事もしてないのだから。 【キラ・ヤマト 搭乗機体:ガンダムF-91( 機動戦士ガンダムF-91) パイロット状態:良好 機体状態:良好 現在位置:C-5 第一行動方針:ジョナサンの信用を得る 第二行動方針:なるべく使えそうな駒は残し、危険そうなのは排除したい 最終行動方針:勝ち残り、皆を生き返らせ平和な世界を作る】 【ジョナサン・グレーン 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー) パイロット状態:気絶中 機体状態:キングジェイダーへの変形は不可、左舷損傷軽微 現在位置:C-5 第一行動方針:クインシィの捜索 第二行動方針:キラが同行に値する人間か、品定めする 最終行動方針:クインシィをオルファンに帰還させる(死亡した場合は自身の生還を最優先)】 本編86話 キラ
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/146.html
私は人ではない ◆7vhi1CrLM6 「動きそうか?」 暗い森の真っ只中に直立している金色の機体――百式。 その輝く装甲の隙間からひょっこりと頭を出したクインシィ=イッサーを見つけて、ジョナサン=グレーンは声をかけた。 「無理だな。派手な損傷は見当たらないが、壊れているようだ」 装甲の上に立ち上がり、彼女はこちらを見上げて話を続ける。 「これに乗っていたのがお前の言うキラとかいう奴なのか?」 「いや、違うな。奴は戦艦に乗っているはずだ」 本来キラが待っているはずの場所にキラの姿はなく、代わりとして近場に残されていたのがこの百式だった。 ということはだ。 「Jアークにその機体のパイロットも同乗して移動したのだろう。周囲に戦闘の跡もない」 「どう思う?」 「どう思うとは?」 「パイロットについてだ。コックピットでこんなものを拾った。見えるか?」 「ちょっと待て……。よし、いいぞ。良く見える」 慌てて手元を操作してクインシィが摘んでいるものを拡大してモニターに表示する。 そこには20cmあまりの茶色い糸のようなものが映し出されていた。 「これは……頭髪か。だが、それがどうした?」 「他に緑のものと5cm程度の白いものと黒いものの種類が確認できる。そしてさらにこれだ」 目を細めて新たに画面に向かって掲げられた白い一本の線を注視する。 「長いだけで特に違いはないと思うが……」 「よく見ろ。全体的に太く、弾力を持っている。これは髭だな。猫の髭なんかがちょうどこんな感じだ」 「四色の毛に動物の髭……そいつは人間か?」 「わからない。しかし、可能性は考慮しておいたほうがいい」 動物の特徴を持ち、なおかつ機動兵器を操縦しうる存在。 そんなものを考え、思い浮かんできたのは―― 「化け猫……まさかそんなものが実在するとでもいうのか」 「オルファンやアンチボディーだって発見されるまではそんな存在があるとは、夢にも思われていなかった。 それに我々を集めたあの化け物に比べればその程度の存在可愛いものだ」 「だが、そんな奇抜な者がいれば最初の場所で……待てよ。 そういえば仮面を被った者がいたな。一人……いや二人か」 「そういうことだ。馬鹿げているとは思うがこの環境に適応するしかあるまい」 「しかし、与太話もここまでだな。熱源反応が一つ。迷走しているが確実に近づいてくる」 空気が変わり、動きが変わる。緊張が充満していく。 すぐさまゲッターに乗り込んだクインシィから通信が入り、レーダーから視線をずらした。 「この反応は……ジョナサン、敵だ。問答無用で叩き潰すぞ」 獲物を見つけた猫のような顔がそこにあった。それにジョナサンもにぃっと笑い、答える。 「ならばまずは俺にやらせろ」 ◆ ほの暗い森の中に何かがきらめくのを見つけて流竜馬は大雷凰の動きを早めた。 きらめきの元が何かまでは判断がついていない。しかし、何か金属質なものが月明りを反射したものであることは間違いない。 この世界で、こんな森の中、そんなものは機動兵器ただの一つしか存在しない。 つまりは己の敵だという事だ。 ――隼人を殺った奴か? 一瞬の自問。同時にそんな考えが頭を過ぎった自分を苦々しく思い、苛立つ。 それが、長年追い求めてきた仇敵を目の前で掻っ攫われたことによるものか。 あるいは、かつての仲間を眼前で殺されたことによるものか。 それを考える思考を竜馬は持たない。というよりは、思考の方向性がそちらを向いていないといったほうが正しいか。 己の気持ちの在り処を探るよりも、そういう行為自体を疎ましく思う――そういう荒い気質の持ち主なのだ。 「へっ、関係ねぇ。奴が隼人を殺った奴だろうとなかろうと敵はぶっ潰す」 竜馬が口元で笑い。大雷凰が一足跳びに黒々とした木々を飛び越える。 眼下には20m前後ほどの機体が一機。大鎌を頭上に大きく振りかざし、迷いもなくそこに飛び込む。 「うおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」 獣のような咆哮と共に大鎌は月夜に振り下ろされた。 金色の機体が真っ二つに切り裂かれ、刀身が深々と大地に突き刺さる。 そして、大地に亀裂が走り、その中心から高速回転をするドリルと共に真ゲッター2が姿を現した。 「何だと!!」 差し迫るドリルに、大鎌を引き抜く余裕もなく手放し、咄嗟に地を蹴り上空へ飛び退く。 次の瞬間、大雷凰はドリルの回転に掻き乱され巻き起こった竜巻状のエネルギーに呑み込まれた。 「かかったぞ、クインシィ!」 翻弄される大雷凰を尻目に、赤・白・黄、三色のゲットマシンがその渦に乗り脇を駆け抜ける。 「おうさ、ジョナサン!」 大雷凰が押しやられ、追い込まれていくその先で三体のゲットマシンは合体し、赤い悪魔が姿を現した。 見ずとも、聞かずともゲッター1を知り尽くした竜馬には分かる。この後に来る攻撃は―― 「ゲッタアアァァァァアアアッッ!! ビイイィィィィム!!!」 「なめんじゃねええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!」 ピンクの閃光が鋭く走り、大雷凰の肩口を抉り飛ばし、大地に穴を穿つ。 瞬間、ドーム上の火球が地表に現出し、その余波で真ゲッター2の巻き起こした竜巻は吹き飛んだ。 その中心を竜馬は駆け上がる。ゲッターに向かって、一直線に、脇目も振らず。 ゲッタービームを放ったことによる僅か零コンマ数秒にも満たない硬直。その隙に二機の距離は詰まり、大雷凰の左腕はゲッターの頭部を鷲掴み、無造作に引き寄せる。 駆け上がってきた勢いそのままの膝蹴りが、ゲッターの腹部にめり込む。 ゲッターの巨体が折れ曲がり、僅かに浮かび上がったその刹那、腹部から閃光が迸った。 だが、すでにそこには大雷凰はいない。その姿は遥かな上空に存在していた。 「へっ! 隼人の野郎に見込まれただけあって、ちったぁやるじゃねぇか」 ◇ 大雷凰は左腕で鷲掴みにした頭部を膝蹴りの時には既に離し、腹部を蹴り上げたその瞬間には、勢いを殺さず流れるように上空に離脱した。 その動きを目の当たりにして、クインシィは一つの疑念を頭に抱く。 「奴はこの機体を知っている?」 現実には流竜馬は真ゲッターのことを知らない。しかし、ゲッターについては熟知している。 ゆえにゲッタービームの発射口の存在するゲッター1の腹部、ゲッタードランゴンの額、その二点に対する注意は片時も怠っていなかった。 この差は地味なようでいてかなり大きい。 真正直に使ったときのみならず、兵装を知らないことによる不意打ちも成立しないだろう。 ならばどうする、とクインシィは自問する。そして、その答えは決まっていた。 「ジョナサン、正攻法で奴を突き崩す。大技はここぞというときにとっておけ」 「クインシィ、なにびびってる。たった一機の! それも半壊した機体だぞ!!」 「侮るなと言っているのだ」 「どうした? オルファンのクインシィ=イッサーともあろうお方が臆したのか」 「そうではない」 「なら、決まりだな!」 ゲッターが分離し、ジャガー号が先陣をきって大雷凰に突撃する。 こうなってしまっては渋々追いかけるほかなかった。 「ジョナサン! ちぃっ!!」 距離は十全。合体は可能だ。 機体を故意にぶらせて速度を削ぎ、ベアー号を先に行かせる。 ジャガー号とベアー号がドッキングするその先で、大雷凰が重心を落とし低く構えるのが見えた。 そしてその次の瞬間、大雷凰は一筋の雷の如く天から突撃を開始する。 十全と思われた距離が潰れていく。 「しまった!」 間に合うか――そう頭に思い浮かべたときにはレバーを引いていた。 二つの声が響き唱和する。 「チェエエェェェエエエエンジ!!」 「ゲッタアアァァァアアアア!!!」 両脚部に変化したイーグル号がベアー号とドッキングを果たし、ライガー号からは両椀が突き出していく。 その右腕には巨大なドリルが、左腕には鉤爪のようなものが構成され、ワイヤーやケーブルが剥き出しの椀部を白いパネルが覆い尽くしていく。 そして、最後に頭部が僅かに迫り出し、両眼が見開かれた。 「逝けよやああぁぁぁああああ!!!」 既に激突寸前、無に等しい距離の中を真ゲッター2は右腕のドリルを突き出し加速する。 大雷凰の蹴りは真ゲッター2の腹部を掠め抉り、真ゲッター2のドリルもまた大雷凰の脇腹を掠める。 高速回転を続けるドリルと装甲の狭間で火花が散り、耳に衝く甲高い高音と焦げ臭い異臭を放つ。 「ジョナサン、次が――」 全てを言い終わる前に大雷凰に肩膝でのしかかられるような格好になり、拳が顔面にめり込む。 続けて二発三発と打ち込まれ体勢が崩れ、四発目を掌で打ち込まれてそのまま顔面を押さえつけられた。 一瞬の浮遊感。そして、一気に落下が始まる。 ――叩きつけられる! 地面に!! サブパイロットの位置座り込んだとて、ゆっくりと落ち着いている暇はない。 メインパイロットは目の前の敵に意識を集中せざるお得ない。その分、周囲に対する警戒はこちらの肩に圧し掛かってくる。 計器を読み取る。 高度は――十分。 レーダーは――東に熱源反応。 「ちぃっ! ジョナサン、オープンゲットだ!!」 返事を待たずに強制分離。 三つに分かれたゲットマシンはそれぞれに大雷凰の脇をすり抜ける。 急速に離れ、大地へと降り立った大雷凰とは対照的に上空で合流すべく上昇を続けるゲットマシン。 その中でクインシィは目まぐるしく周囲を伺い、見つけた。 まだ夜明けまで程遠い東の空、森林の上を飛ぶ蒼いブレンパワードの姿を―― 「ジョナサン、勇がいたぁ! 勇がぁ!!」 ◆ 蒼くまっすぐな長い髪と抜けるほどの白い肌を持った青年期の女性グラキエース。 彼女は蒼いブレンパワードの中で必死の抵抗を続けていた。 視界の内では二機の機動兵器が死闘を演じている。 一つは、赤いマフラーを首に巻き、片腕と頭を失った機体。 もう一つは、西洋の小悪魔を思い起こさせるシルエットの赤い機体。 それらが放つ猛々しいまでの激情が、体を取巻いていた。 流竜馬の内に篭る激しい復讐心が、ジョナサン=グレーンとクインシィ=イッサーの捻じ曲がった肉親に対する情念が、肌に纏わりつきじわじわと浸透してくる。 その感覚は無視できるほど弱くはなく。 また理性を失わせるほど強くもなく。 もどかしい。 好物を目の前に、焦れて体から湧き出たメリオルエッセの本能が囁きかけてくる。 あれをよこせと。 あの感情のベクトルをこちらへ向けろと。 そのぞくぞくと這い上がってくる陰湿な本能に嫌悪し、かぶりを振った。 ――嫌だ! そんなこと……私は望んでいない!! 拒絶に意味はなかった。 負の感情を吸い取るように作られた体は、意志の力に左右されはしない。 しかし、体は意志に容赦なく干渉してくる。 それに反抗するということは、弄られているようなものだった。 いっそ流されてしまえば楽なのは目に見えて分かっている。 だけど、流されるということは昔の自分に戻るということだ。 ジョシュアと会う前までの自分に戻るということだ。 ジョシュアと出会ったことが、過ごした日々がなくなるということだ。 それは、苦しい。泣き出したくなるほどにつらい。 でも、流された苦痛の先に快楽が見える。このままではいつか押さえが利かなくなる。 逃げよう。 この場に残っていても意味はない。 ここから少しでも遠くに、遠くに逃げよう。 そう思ったとき、体を包み込む情念が数倍に跳ね上がった。愛憎の入り混じった複雑で強烈な情念が向けられている。 ――どこから? 何故、私に? 体が強張り、自分を自分で抱きしめるようにして身を縮める。 無理だ。 もう耐え切れない。 ここから早く逃れよう。 そう思い動き出そうとした瞬間、栗毛でショートカットの少女がモニターに映し出された。 「勇ッ!!」 少女が叫ぶ。その声に乗って情念の波が襲ってくる。 腕に力を込めて、唇を噛み締めて押し黙り、波が過ぎ去るのをじっと耐えて待つ。 モニター越しの少女の表情が瞬く間に曇っていき、眉間に皺が寄っていくのが見えた。 「お前は誰だ? 何故、勇のブレンに乗っている?」 愛しさの入り混じった捩れたものから純粋な憎悪へと感情の質が変わる。 そしてそれが真っ直ぐ射抜くように自分へと向けられている。 「答えろ! 勇をどこへやった?」 全身に血が巡る。 メリオルエッセとしての本能が押し寄せる。 押さえつけていた理性の箍が外れていく。 それを必死で繋ぎとめる。 「勇だよ! 勇を出しなさい!!」 問いに答える余裕は既にない。 痺れを切らした少女の通信が途切れる。 ぼやけた視線の先で赤い悪魔が姿を消し、間際に現れた。 同時に振り下ろされた巨大な斧を、咄嗟に半身になってかわす。 そしてそのとき、迫る斧に対応するために意識がわずかに削がれた。 一瞬だった。 その刹那とも言える一瞬で、驚くほどあっけなく理性は敗北する。 押し切られ、一線を越えて――心が堕ちてゆく。 後はもうふわふわと浮ついた夢のようで、何が何だかよく分からなかった。 ◇ 赤いマフラーの機体と赤い悪魔が真っ向から衝突し、押し合い、せめぎ合う。 その間隙を縫って、蒼いブレンパワードが駆け抜ける。 大雷凰、真ゲッター、ネリー・ブレン、三機の機体が入り乱れていた。 その内の一機――真ゲッターの中でジョナサン=グレーンは「まずいことになった」と一人ぼやく。 ここで三つ巴の形になるということは予測していなかった事態だ。 半壊した機体を落とし、敵対する参加者を一人減らす。それが目的だったはずだ。 それが、クインシィが勇のブレンパワードを見つけたことで狂った。 戦いの最中には時として思いがけなかったことが起こるものだ。三つ巴になったこと事態がその現われといっても良い。 三つ巴になったことでそれが起こる可能性は飛躍的に高まった。 一対一ではありえなかった事態が起こりうる。 これを二対一の形に持っていけば危険性は格段に減るのだが、クインシィの気性はそれを受け入れないだろう。 ならばやることは決まっている。 「クインシィ=イッサー」 「うるさい! 何だ!」 戦闘中である。視線も合わせずに怒鳴り返された。 が、ここで怯むわけにもいかない。不機嫌を買うことを承知で話を続ける。 「ここは引き上るぞ」 「な……に?」 「俺だって、引き上げ時ぐらい知っているつもりだ」 「正気かジョナサン? 勇のブレンパワードがいるのだぞ!」 ここでクインシィを説得できるかどうかが一つの分かれ目だった。 元々理屈の分からない女ではない。それを受け入れる余裕が有るか否か、そこが問題なのだ。 そして、今はそれが有ると踏んでいた。 先の読めない三つ巴の中にどっぷりと漬かってしまうわけにはいかない。 「あのブレンパワードに乗っているからといって、伊佐美勇と面識があるとは限らない。 ここでは何のゆかりもない機体に乗っている奴が五万といる。それはご存知のはずだ。 ならば、下手に潰し合いに混ざるよりは離脱したほうが得。そういうことだ」 「ブレンパワードはオルファンを傷つける」 「それの後始末も上手く行けば奴がやってくれる」 「だが……くっ!!」 そこで会話が途切れた。 踏み込み振るったゲッタートマホークが隻腕となった大雷凰に掴まれたのだ。 「悪いな。鎌より斧のほうが好きなんだ。こいつは貰っていくぜ」 通信に割り込んできた男の声が鼓膜を揺らす。 同時に衝撃が奔り、ゲッターが地面に背中から蹴り落とされる。 「クインシィ、体勢を立て直せ!」 「今、やっている!」 大地に激突し、起き上がろうとしたゲッター。 その腹の上でバイタルジャンプを示す鋭い異音が鳴った。 途端に背筋にぞくりとした悪寒が走る。 そこは僅か装甲一枚を隔てたコックピットの向う側。直線距離で言えば1mもない。 画面一杯に映し出されているブレンよりも、直にコックピットに反響してくる音に恐怖を感じる。 突きつけられたブレンバーにチャクラ光が灯るのが鮮やかに目に映っている。 ゴトリ、とゲッターの装甲を足場として確保した音が直に響き、顔が蒼白になり、叫んだ。 「クインシィ!!!」 が、次の瞬間、それは発射されることなく、異音と共にブレンの姿は掻き消える。 そして、代わって視界を占めたのは唸りを上げて迫り来る大雷凰の蹴り。 右手で近場に転がっていた百式の半身を掴み、横から叩き付け、そのまま横に転がるようにして蹴りをさけた。 画面の向うで唇を噛み締めつつクインシィが叫び、判断を下す。 「ちっ! ゲッター2で地中に潜行。その後、離脱する。いいな!!」 「その言葉、待っていた!!」 瞬間、分離。千に砕けた金色の破片が降り注ぐ中、ゲットマシンは上空を目指し、真ゲッター2へと姿を変えた。 一転して、大雷凰直上からの垂直降下。 「そこにいると怪我するぜ。ドリルハリケエエェェェエエエエン!!!!」 叫び、右腕のドリルを突き出し、速度を上げ、全速で突っ込む。 サイドステップでさけた大雷凰を掠め、大地にまともに激突する。 が、これでよかった。ゲッター2の右腕はいかなる岩盤をも打ち砕き大地に穴を穿つドリル。 地中へとゲッターは潜行し、その姿を隠した。 ◇ 岩盤を掘削する音が遠のいていく。ゲッターの放つ信号がレーダーの範囲外に抜けていく。 途中で地上に出たのだろう。その速度は驚くほど速い。 追いかけることは既に諦めていた。 地上を疾駆するゲッター2に追いつける存在など在りはしない。 「また逃げやがったか……」 口から漏れた言葉はゲッターにだけ向けた言葉ではない。あの蒼い小型機もまたいつの間にか消えていた。 二機――否、隼人を落とした機体も合わせれば三機とも逃した。 結局、この30分余りのいざこざが竜馬に残したものといえば、他には真っ二つに切り裂かれた機体の半身とゲッタートマホーク。 代償は大雷凰の片腕とゲッターサイト。それに自身の体力の消耗だった。 望んだ戦果には程遠い。 「ちっ! けちが付いてやがる」 その付き始めはおそらくあの濃紺の可変機と相対したときからだろう。 あの一戦で負った損傷が大雷凰の力を大きく削いだ。 そして、その後戦闘を重ねるにつれて徐々に、しかし確実に大雷凰は力を落としていっている。 決まると思った攻撃が決まらず紙一重でかわされる。 機体の動きと体の動きの間に僅かな齟齬が生じてきている。 一度調整が必要だった。 「このまま勝てれば楽なんだがな……」 誰に言うともなく呟き、竜馬はサブモニターに地図を引き出した。 現在地から東、あるいは西に四ブロック。そこに存在する基地に目が止まる。 整備の為の設備ぐらいはあるだろう。部品の有無は分からないが、最悪この金ぴかの機体を使えば良い。 規格はまず合わないだろうが、何一つ流用できないということも考えにくい。 整備のことを考えるなら間違いなくそこだった。 だが、そこは同時に他の参加者が集まりやすい場所でもある。 だったらどうする―― 「へっ! そんなことは関係ねぇ」 蹴散らし、血祭りに上げる。ただそれだけだ。 大雷凰もまだ二三戦は優に戦えるだけのタフさを持っている。 頭部を?がれ、片腕を失った現在でさえ、あの見知らぬゲッター相手だろうと遅れを取るとは微塵も思っていない。 ギラついた目で竜馬は笑う。 あらゆる物に化け、何処からともなく無数に沸き、襲ってくるインベーダー。それを相手にした月面戦争。 復活した早乙女博士を相手に、大地を覆い尽くすゲッタードラゴンの群に囲まれていたここに飛ばされる寸前の状況。 それらに比べれば、この程度の状況はぬるま湯につかっているようなものだ。 巨大な鉞を肩に担ぎ、百式の半身を引き摺り、大雷凰は再び動き出す。 目指す先はG-6基地。その足取りはしっかりと大地を捉え、迷いなくゆるぎないものだった。 ◆ 流竜馬から北にちょうど50km――C‐5地区の暗い森の中にネリー・ブレンは姿を隠していた。 その中で、ラキは体をブレンに預け、ぼんやりと木々を眺めていた。 戦場から離脱したのはラキの意志ではない。ブレンが独断で跳んだのだ。 あのときのことは夢の中の出来事のようにしか覚えていなかった。 醒めてしまえばそれは途切れ途切れの記憶の断片とでしか残らない。 しかし、それでもおぼろげにどういうものだったのかは分かる。 ギンガナムに立会いを申し込まれたときはこうではなかった。 明らかにメリオルエッセとしての機能が修復していっている。本能が、欲望が増している。 それが徐々に進んでいるのか、負の感情に当てられたときに一気に進行しているのかはわからなかった。 「くくく……フフ……ハハハハハハハハ……」 ひとしきり笑い。そして、肩を震わせて泣いた。 ぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちる。 今になって本当の意味で自覚する。 私は人ではない。 もしかしたら、もうメリオルエッセですらないのかもしれない。 少なくともジョシュアに出会う前、純粋なメリオルエッセであった頃には、こんなに惑わされなかった。 こんなにも自分の体を嫌だと思うことなんてなかった。 ジョシュアの心と混ざり合うまでは感情が希薄だった。 そのせいかも知れない。 人と混ざり、メリオルエッセでもなく、人でもない――半端者。 私は壊れているのだ。 だからといって心を捨て去ることも出来ない。 それは裏切りだ。 ジョシュアに対する酷い裏切りだ。 ジョシュアは言ってくれた。 人でなくても関係ないと。 でも私はやっぱり人になりたかった。 ジョシュアと同じ人になりたかったんだ。 だからいくら辛くてもこの心は捨てれない。捨てられない。 もう人になることが叶わぬとしてもせめて……。 せめてあの頃に戻りたいんだ。 ジョシュアがこんな私でもいいと言ってくれた、あの頃の私に。 【クインシィ・イッサー 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~世界最後の日) パイロット状態:疲労小 機体状態:ダメージ蓄積 現在位置:C-6 第一行動方針:ジョナサンと共にキラのところへ 第二行動方針:勇の撃破 第三行動方針:ギンガナムの撃破(自分のグランチャーを落された為逆恨みしています) 最終行動方針:勇を殺して自分の幸せを取り戻す】 【ジョナサン・グレーン 搭乗機体:真ゲッター2(真(チェンジ)ゲッターロボ~世界最後の日) パイロット状態:良好 機体状態:ダメージ蓄積 現在位置:C-6 第一行動方針:クインシィと共にキラと合流 第二行動方針:キラが同行に値する人間か、品定めする 第三行動方針:強集団を形成し、クインシィと自分の身の安全の確保 最終行動方針:クインシィをオルファンに帰還させる(死亡した場合は自身の生還を最優先) 備考:バサラが生きていることに気付いていません。 【流 竜馬 搭乗機体:大雷鳳(バンプレストオリジナル) パイロット状態:怒り、衰弱 機体状態:装甲表面に多数の微細な傷、頭部・右腕喪失、腹部装甲にヒビ、胸部装甲に凹み 現在位置: C-6 第一行動方針:G-6基地で機体の整備 第二行動方針:クルツを殺す 第三行動方針:サーチアンドデストロイ 最終行動方針:ゲームで勝つ 備考1:ゲッタートマホークを所持 備考2:百式の半身を引き摺っている】 【グラキエース 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード) パイロット状況:精神不安定。放送の時刻が怖い 機体状況:無傷、EN残量3/4 現在位置:C-5 第一行動方針:アイビスを探す 最終行動方針:??? 備考1:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません 備考2:負の感情の吸収は続いていますが放送直後以外なら直に自分に向けられない限り支障はありません】 【二日目0 30】 BACK NEXT ・――言葉には力を与える能がある 投下順 吼えろ拳/燃えよ剣 鍵を握る者 噛合わない歯車 時系列順 謀 ―tabakari― BACK NEXT 我が道を走る人々 クインシィ それぞれの思惑 我が道を走る人々 ジョナサン それぞれの思惑 Take a shot 竜馬 解し得ぬ存在 暗い水の底で ラキ Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/41.html
彼女の答え ◆Y3PBSdzg36 「これが私の機体ね…」 カティアはそうつぶやくと機体を調べ始めた しばらくして、 「これは!?」 この機体、VF22S・Sボーゲル2Fには反応弾つまり核兵器が搭載されていたのだ とりあえず持っていることで相手の戦意削減にもなるが… (できれば使いたくはないですね) 次に索敵をして敵がいないことを確認して考えをまとめようとする (統夜たちが無事でいて欲しいけど…) しかし、これは殺し合いなのだ 最後に立っているのは一人なのだ だが… (私は、殺せない) (他に方法はないけれど、私は逆らってみせる) 仲間を集めゲームを脱出する、それが彼女の出した答えだった (だけど… あの場所で見た統夜は何かが違っていた いまの明るい統夜じゃなくてまだ最初のとき、戦うのを拒絶していたころのような…) 「…とにかく仲間を見つけることからはじめましょう」 彼女は行動を開始した 【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:E-2 第一行動方針:仲間を集める 第二行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【初日 12 25】 BACK NEXT 邪龍空に在り 投下順 花言葉は「勇敢」 無題 時系列順 純真なる抗体、真紅の悪鬼 BACK 登場キャラ NEXT カティア 追悼
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/150.html
心、千々に乱れて ◆7vhi1CrLM6 あくびをし、寝ぼけ眼を擦りながらカテジナー=ルースは起き上がった。 暗い闇の中手探りで灯りをつけるとレーダーを覗き込む。 何かが近づいてくる。そういう気がしたのだ。 根拠は何もない。ただ感じただけ、そういう気がしただけ、それでもそれは確信に近いものだった。 レーダーに映し出された二つの光点によって、程なくそれが正しいものだったと証明される。 レーダー類の不調のせいで距離はそう遠くない。 最初はかなり速い速度で接近してきていたのが、暫くして静止した。 おそらくはこちらの姿が見えない為警戒をしているのだろう。あるいは迷っているのかもしれない。 彼女は今湖の底に隠れていた。 「迂回をしてくれるようなら楽なのだけれどね」 あくびを一つ噛み殺してぼやく。 疲れが抜け切っていないのか、どうにも眠たかった。 接触を図るよりも今はまだもう少し寝ていたい。それが本心だ。 しかし、そんな思いを裏切るかのように光点がすっと接近を始める。 「やっぱりほうっておいてはくれないわよね」 女の見栄というか、習性のようなもので身支度を整えながら、思案を練り始める。 今の動きで分かったことがある。 まずは二人組という点でおそらくは好戦的な相手ではないということ。 そして、二対一という局面において一度動きを止めたということは、用心深い性質の持ち主がいるのか、あるいは戦力に不安が残るということ。 にも関わらず接近していたということは、捻じ伏せるか、逃げ切るか、どちらかの自信があるという現われ。 それを念頭において逃げるべきか、接触すべきかを考える。 逃げようと思えば逃げることは可能だった。 なにしろまだ互いに姿を見せてない上に、こちらは視界の悪い水中だ。 一度レーダーのレンジ外に抜けてから物陰に身を潜めれば、相手を撒くことは難しくない。 「だけど……接触すべきでしょうね」 いかにも乗り気でないといった態度。緩慢な動作でシートに腰を掛けなおす。 何かを潰したような感触があった。驚いて腰をずらしてみると、三種の樹脂マスクが出てきた。 あの核ミサイルに乗った男から得たボイスチェンジャー付きのそれは、正体を隠しつつ交渉するという点において、これほど都合の良いものはない。 だが、それを何の躊躇もなしにぽいっとコックピットの後方へ投げ捨てる。 理由は特にない。強いて言えば似合わないからである。 そういえばこのマスクを持っていたのも二人組だった。 核ミサイルなどというふざけたものを乗り回し、追い回してくれたことは、今思い出しても頭にくる。 だが、その二人はもういない。 カテジナ=ルース、彼女自身が手を下し核の炎で葬った。 理由は単純。必要ない、利用する価値もない存在だと判断したから。 その点、最初に出会った二人は違った。 ギャリソン時田とユウキ=コスモ。この二人は外れ機体引いた自分の盾になってくれたという面で非常に役に立った。 そして、熱気バサラと彼を知る一人の少年。彼らもまたラーゼフォンを運んできてくれたという点と、その性能を試させてくれたという点において役に立っている。 ならば、と彼女は思う。 ならば今度の二人組は何をもたらしてくれるのか、それを思うと気持ちが僅かに上向きに修正された。 既に距離はかなり近い。 いきなり攻撃を仕掛けられてもつまらない、と思い、ラーゼフォンをゆっくりと上昇させる。 湖面を抜け開けた視界に二機の人型機動兵器の姿が飛び込んできた。 「こんばんは。こんな夜更けに若い女の子に会いに来るものではないわよ」 眉間に皺を寄せて不機嫌を装い、口を尖らせる。 それで相手が機嫌を取ろうとすれば御の字。主導権を握ることができる。 だから殊更に嫌悪感を露にして言葉を続けた。 「もっとも、夜這いにでも来たって言うのならば話は別でしょうけどね」 むっとした様子を年若い方が顔に出すのが見えた。対して年嵩の男のほうの顔色は変わらず判断が難しい。 機体間の距離は遠くはない。しかし、不意をつけるほど近くもない。 そして、左右に分かれている。それもごく自然な動作でその配置についていた。 場慣れしているといっていい。 「何か不機嫌を買うようなことをしたのなら謝ろう。キョウスケ=ナンブという」 「カミーユ=ビダンです」 「カテジナ=ルースよ。何の用かしら?」 「単刀直入に聞く。敵か? 味方か?」 「敵よ。生き残れるのはただ一人なのだから、この世界にいるのは全員敵。 でも今のところ交戦の意志はないわ。あなたたちの出方によるけど……」 言い切り、動きを伺う。 嘘は言っていない。考え方にも不自然なところはないはずだ。 そのうえでどう出てくるのか、それに少し興味があった。最悪戦闘になる覚悟は出来ている。 「こちらにも交戦の意思はない。情報の交換を行いたいのだが構わないな?」 「構わないわよ」 そうして暫く情報の交換が行われる。 受け取った情報は、補給ポイントとG-6基地で交戦したという複数の機体、それに獅子を模した胸部装甲の機体について。 対して提供した情報は、ギャリソン・コスモ・バサラ、そして最初に交戦した黒いガンダムについて。 もちろん、情報に手は加えてある。 コスモ・バサラという味方を装った二人組に騙されて襲われ、同行していたギャリソンさんは死亡。自分も命からがら逃げ出した、といった塩梅にだ。 そうすることで二人と距離を置いている理由が説明できる。同時に争いの扇動にもなる。 見たところこの二人は戦闘慣れしている。そんな人間を二人も相手取るよりも、どこかであの二人と潰しあってくれたほうが得という算段だった。 「カテジナさんも一緒に来ませんか?」 「えっ?」 突然、予想外の言葉をかけられてはっと顔をあげる。 その言葉は青い髪の少年――カミーユ=ビダンのものだった。 「まだG-6基地には二人の仲間がいます。 そこのほうが一人より安全だし、上手くいけば殺し合いをしなくてすむかもしれない」 言葉を探す。 答えは決まっていた。しかし、頭の中に言葉が浮かんでこない。 何故――迷っているとでもいうのか? ちらりとキョウスケという男の顔を盗み見る。 相変わらずの能面面。人工的な笑みの一つくらい浮かべてみせても損はないだろうにと思う。 だが、黙っているということは、黙認するということだろう。 基地に仲間がいるというのは、この男があえて伏せていたはずの情報だ。 それを口走っても止めない程度の信用は築けたということか。十分だ。これ以上の深入りは望むものではない。 「一緒に行きましょう、カテジナさん。あなたは殺し合いなんかしちゃいけない人なんだ」 何を根拠にそんなことを、と思う。 そう思った後で、ウッソに似てるなとふと感じた。 何処がではない。このカミーユと名乗る少年の容姿・性格はウッソのそれとは大きく異なっている。 纏っている空気も雰囲気も違う。 それでもこの少年から受けるプレッシャーは何処となくウッソに似ていた。 となると迷っている心はウーイッグに対する里心。未練か? ――馬鹿らしい。 それで合っているのかは分からなかったが、ようやく胸の内に言葉が浮かんできた。 「無理だよ。少なくとも私はあなたたちを完全には信用できはしない。 そんな相手と一緒にいれるはずがないだろう?」 「何故ですか?」 そう。目の前の少年が放つ気はウッソのそれに似ており、私を惑わせ、苛立たせる。 この少年と同行するのは危険だ、と直感が告げている。 「甘い言葉を使って騙してくる者もいる。ここでは自分以外を信用できるはずがない。 お別れだよ、坊や。次は敵同士だ」 そう言い残し、逃げ出すようにラーゼフォンはその場から飛び去る。北に向かってただ一直線に、ただひたすらに。 煩わしい、と思う。何故私が逃げなければならないのか、とも思う。 だが、あの場から逃げ出したかったのは事実なのだ。 ――この私がいたたまれなくなったとでもいうのか? 馬鹿らしい。 情報は得た。 奴らはG-6の基地を本拠に行動している。ならばやることは決まっている。 これから出会う参加者全てに情報を吹き込み、送り込めばいい。善良そうな奴には危険人物が潜んでいると、危険な奴には参加者がいるとただ吹き込む。 それだけで奴らは勝手に潰しあい、やがて全滅するだろう。 そんなことを考えつつ十数分ほども飛んだときだろうか、唐突に一つの考えが頭を過ぎった。 「地球クリーン作戦やギロチンと同じ?」 腐らすものは腐らせ、焼くものは焼く。汚い大人たちは潰して地球の肥やしにしてしまう地球クリーン作戦。 そして、リガ・ミリティアのような反目するものを黙らせるためのギロチン。 この二つはザンスカール帝国が掲げるマリア主義の為の必要悪。 ならばこの殺し合いも危険因子を摘み、黙らせ、古いものを次代の肥やしにする必要悪? だったら何故―― 「何故、私が巻き込まれている?」 分からない。分からない。分からない。 頭の中が混乱し、思考にノイズがかかる。不愉快極まりない。 そして、ドンッと何か重くて巨大な塊に体当たりされたかのような衝撃が奔った。 ◆ そこは真っ白くてなにもない空間だった。 何故ここにいるのか? ここは何処なのか? 不思議に思い、あたりを見回しているうちにテーブルが現れ、椅子が現れ、そして日常の風景が姿を現した。 黒髪の少女が金髪の少女を叱っている。 またコックピットにチョコでも持ち込んだのかと思わず苦笑いが漏れた。 やがて黒髪の少女を諌めるように軽い感じで赤毛の少女が割って入り、涙目になっていた金髪の少女がほっとした表情を見せる。 そんな日常の風景。 三人の少女が文字通り空から降ってきてここに飛ばされるまでの僅かな間に、幾度となく繰り返され、すっかり馴染んでしまった光景。 それが眩しくて思わず立ちすくむ。 不意に声をかけられた気がして振り向くと、二人の女性がそこに立っていた。 二人はただ笑い。ただ立っていた。 いや、よく見るとその口元は動いている。 だけど言葉は届かない。何故だか分からないが声は届いてこなかった。 でも、と統夜は思う。 そんな顔で俺を見ないでくれ、と。 俺はカティアもメルアも救えなかった。助けられなかった。 いや、助けようとすら思わなかったんだ。 そりゃ、気にはなったさ。 だけど、自分のことで頭が一杯で! あんた達のことまで気が回らず!! ただ……自分が生き延びることしか……選ばなかった。 仕方ないだろう。 一人しか、一人しか生き残れないんだ。 だから…… だから…… 頼むから、そんな優しい顔でうれしそうにこっちを見ないでくれ。 そんな顔される資格なんて俺には……ないのだから……。 目の前の黒髪の少女は少し驚いたような表情を浮かべて、何かを口走り、そして深々と頭を下げた。 だけれども、言葉はやはり泡となって大気にとけ、届いてくることはなかった。 ◇ 目を開けると目の前にぼやけた壁があった。 右手は毛布を掴み、体は猫のように丸まっている。 寝てたのかと思い、体を起こすと頬を伝って涙が零れ落ちた。 それを見て、我ながら女々しいと思う。 何故こんな夢を見たのか。 おそらくは覚悟が足りないのだろう。 一人生き残ることを誓いつつも、誰一人殺せず。未だに迷ってあんな夢を見る。 覚悟が足りない証拠だ。 お前は生き残りたいのだろう? 生き残ると決めたのだろう? 違うか? 大きく長く息を吐く。顔を上げ宙空の一点をぼんやりと見つめる。 「違わないさ……」 ポツリと呟いた。 ――そうだ。何も違わない。 周囲を埋め尽くしている水の振動が伝わり、機体が震える。 レーダーが接近してくる何かを捕らえた。 ――ならば、どうする? 上空にゆっくりと何かが接近してくる。 ――決まっている。 「斬ろう……敵も……迷いも……」 気取られぬようゆっくりと機体を起こすと体勢を整え、しっかりとした足場を探す。 慎重に、慎重にだ。 足場が整うと今度はオープンチャンネルのスイッチを入れた。 通信する気はない。だから身は潜め、呼吸の音にすらも気を使う。 やがて独り言を漏らす女の声がコックピットに響いた。ほっと一息。 テニアではない。声が違った。 懸念が晴れる。同時に、またどうにもならない事に拘っている、と自分を叱り付ける。 だが、後はやることをやるだけ。目の前のことに集中するだけだ。 敵機が直上に迫る。 頼む。気づかないでくれ、と念じている自分に気づいた。 同時に大丈夫だと理性が囁く。 夜の湖底。月明かりも届かぬそこは決して湖上から見えないはず。 仮に見えたとしても、微動だにしないヴァイサーガは暗礁のようにしか映らないはずだ。 そして、レーダー。恐らくは敵のレーダーもこちらを捉えているだろう。 だが、オープンチャンネルで漏れてくる言葉を聞く限りは、こちらに気づいたそぶりはない。 何に気を取られているのかは知らないが、運はこちらに傾いている。 大丈夫。この奇襲は成功する。そう念じて心を落ち着かせる。 やがて、敵機はゆっくりと上空を通過する。不審なところは何もない。 落ち着け。落ち着けと自分に言い聞かせて、逸る心を抑えた。 パネルを引き出しゆっくりとコードを入力する。 一撃でかたをつける。そのために入力したコードは―― ――『光刃閃』―― 掌に刃の重さを感じ、足場を踏みしめ、ヴァイサーガは音を超え、一筋の閃光となって突撃した。 瞬く間に水中を抜け、闇夜に飛び出る。 風を斬り、鞘から解き放たれた居合いの一撃は深々とラーゼフォンに食い込んだ。 背後のからの虚を突いた不意打ち。防ぐ術はない。 轟音が遅れてやってくる。同時に硬く重い衝撃が伝わる。 咄嗟に感じ取る、このままでは刃が止まると。 いかにヴァイサーガ最大の攻撃である光刃閃といえど、50m級の機体を一刀の元に両断するのは容易なことではない。 深々と食い込みはすれど、その屈強で頑丈な装甲が刃を止める。 それを力ずくで抜くには、片手の居合いでは腕力が足りなかった。 ――重い。凄く重い。これが断ち切ろうとしているものの重み。 鞘に添えていた手を離す。 刀の勢いが完全に止まってしまう前に柄へと手を伸ばす。 ――これをここで断ち切る!! 片手から諸手へ。両の手に力がこもり、男は獣のような咆哮を挙げる。 そして、一刀の元にラーゼフォンは両断され、刃が抜けた。 止まらぬ勢いのまま上空に投げ出された無防備なヴァイサーガの中、統夜はラーゼフォンを睨む。 ラーゼフォンの傷口は狙った正中線を逸れ、右腰から入り上へ。そして、右肩殆ど首の付け根といってもいいあたりから抜けていた。 ショートした回線が火花を散らし、潤滑油にでも引火したのか、濛々と黒煙が噴き上げている。 その様を見て統夜は小さくガッツポーズをした。全身にじっとりと汗をかいている自分に気づく。 緊張が解けて、ぐったりとシートに沈み込む。そして、何かが聞こえた。 思わず顔をあげて周囲を見回す。 不審なものはないもない。あるのは夜空に浮かぶ月と黒煙を上げて燃え盛る大型機。 ――今の声は一体どこから? そう思ったとき、統夜は思い出した。通信回線を開いたままにしていたということを。 ということは――。 全身を怖気が襲った。通信から漏れてくるのは生きながらに焼かれる人の声。 大きく損傷した機体のせいか、よくは聞き取れない。 だがしかし、これは悲鳴だ。人の叫び声だ。 それが『熱い』と言っている。『助けて』と言っている。 咄嗟に耳を両の手でふさぐ。それでも脳髄に叩き込まれた声は消えない。 通信を切ろう。そう思い、手を伸ばした。 だが、まるで真冬の悴んだ手のように震え、言うことを聞かない。そしてその手は統夜の望むことと反対のことをした。 映像通信のスイッチが入り、通信が繋がる。 そして、目に飛び込んできたのは、焼け爛れ、熱に溶けた皮膚がビニールか何かのように両の腕から垂れ下がり、黒く燃え、火に包まれた何か。 だがそれでもそれは生きている。のたうち、転げ周りながらも苦しさを訴え、助けを求めている。 ――助けよう。 ここに来て始めてその言葉が脳裏に浮かんだ。 目の前で苦しんでいる人がいる。助けを請う人がいる。 惨状を目の前に、そ知らぬ顔で見ないふりが出来るような神経を紫雲統夜は持ち合わせてはいなかった。 「待ってろ! 今、助けてやる!!」 声をかけ励ます。ヴァイサーガをラーゼフォンに寄せると切り口の断面から装甲に手をかけた。 コックピットの位置は分からない。 だが、火の手が回っていることから、切り口に近い場所に位置していることは予想が付く。 だから、断面から指を食い込ませ、コックピットを探して力ずくで装甲を剥がす。 これ以外に方法が思いつかなかった。 モニターをチェック。動きが先ほどよりも弱い。 だが、声は聞こえる。 急がなければと焦りが体を支配する。 声をかけ続け、励まし続ける。 装甲を掴む。掴む。掴む。 強引に剥がす。剥がす。剥がす。 何度それを繰り返しただろう。既に装甲というより内部を掻き分けている状態に近い。 モニターの向うの動きはもうほとんど見えなくなった。 だが、たまに掠れた様な声が聞こえる。 それを希望に作業を続ける。焦りはますます体を支配していた。 そして、モニターに巨大な指のようなものが映り、鮮血が飛び散った。 一瞬の出来事に思わず呆然とする。 暫くは焦点が噛合わず、ようやく合ったときには、モニターに飛び散り、乾き焼け焦げた黒い血痕だけがそこに残っていた。 「あ……あぁ……」 声をかけようとして言葉は出ず。奥歯がカタカタと震える。 支えていたヴァイサーガーの腕が離れ、焼け焦げたラーゼフォンが水面に落下して大きな水柱を上げた。 「ちが……違う。俺は悪くない! 殺そうとしたんじゃない! 助けようとしたんだ!! 助けたかったんだ!! なのに!! なのに!!!」 涙を浮かべ、だらしなく鼻水を垂らし、誰に言うでもなく言い訳をただひたすらに繰り返す。 しかし、それを聞くべき人間はもうこの世に存在しない。 そのことに少年が気がついたとき、持って行き場のない感情は悲痛な叫びとなって、闇夜に呑まれて消えた。 「うあ……ああ……あぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっっっっっ!!!!!」 【紫雲統夜 搭乗機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態:精神不安定 機体状態:無傷、若干のEN消費 現在位置:G-8 第一行動方針:逃げ出したい 第二行動方針:他人との戦闘、接触を朝まで避ける 第三行動方針:戦闘が始まり、逃げられなかった場合は殺す 第四行動方針:なんとなくテニアを探してみる(見付けたとしてどうするかは不明) 最終行動方針:優勝と生還】 【カテジナ・ルース 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン) パイロット状況:死亡 機体状況:大破】 【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・SボーゲルⅡ(マクロス7) パイロット状況:良好、マサキを心配 機体状況:良好、反応弾残弾なし 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:キョウスケの護衛でG-8補給ポイントへ向かう 第二行動方針:マサキの捜索 第三行動方針:味方を集める 第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒 最終行動方針:ゲームからの脱出またはゲームの破壊 備考:ベガに対してはある程度心を開きかけています】 【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ビルトファルケン(L) (スーパーロボット大戦 OG2) パイロット状況:頭部に軽い裂傷、左肩に軽い打撲 機体状況:胸部装甲に大きなヒビ、機体全体に無数の傷(戦闘に異常なし) 背面ブースター軽微の損傷(戦闘に異常なし)、背面右上右下の翼に大きな歪み EN60%、スプリットミサイル残弾ゼロ、オクスタンライフル残弾B2発W1発 現在位置:G-8補給ポイント 第一行動方針:G-8で補給を完了する 第二行動方針:首輪の入手 第三行動方針:ネゴシエイターと接触する 第四行動方針:信頼できる仲間を集める 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?) 備考:アルトがリーゼじゃないことに少しの違和感を感じています】 【残り27人】 【二日目2:50】 BACK NEXT 吼えろ拳/燃えよ剣 投下順 これから ・――言葉には力を与える能がある 時系列順 吼えろ拳/燃えよ剣 BACK NEXT 暗い水の底で 統夜 決意と殺意 星落ちて石となり カテジナ 謀 ―tabakari― カミーユ これから 謀 ―tabakari― キョウスケ これから
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/61.html
追悼 ◆Y3PBSdzg36 ―――カティアちゃん… ふとメルアの声がした気がした (気のせいよね) カティアはMAPの南の方の町のほうに向かうことにしていた 理由はない なんとなくその方が逢えるかと思ったからだ できるだけ高度を上げ、目標に向かって飛び立っていった ―――しばらくして 「ひどい…!」 そこには大破した機体があった もう辺りには誰もいないようだが とりあえずバトロイドに変形して降り立つ 辺りを見回すと緊急離脱したのか穴だらけのコックピットが落ちていた 中を覗くとかろうじて女性と見分けられる死体があった 顔は無事であったので判別できたのである 女性の顔は悲しそうな顔をしていたが、気のせいか安らかにも見えた とりあえずコックピットを調べる 撃墜した相手との戦闘データを得ようとしたが機体が特殊でわからなかった (とりあえず埋めてあげよう) 機体で穴を掘りそこに死体を埋める そして数秒黙祷をささげた 目を開けた瞬間強烈な吐き気がカティアを襲う なんとかこらえ呼吸を整える 「私は、絶対に負けない!」 叫び、彼女は飛び立っていった 【カティア・グリニャール 搭乗機体:VF22S・Sボーゲル2F(マクロス7) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:E-3 第一行動方針:7-Dに向かう 第二行動方針:仲間を集める 第三行動方針:統夜、テニア、メルアを見つける 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【時刻:14 00】 BACK NEXT そして騎士は走り出す 投下順 黄色い幻影 そして騎士は走り出す 時系列順 赤い彗星 BACK 登場キャラ NEXT 彼女の答え カティア 堕ちた少女
https://w.atwiki.jp/suparobobuast/pages/58.html
スパロボTRPG完全版 サンプル敵ユニットデータ スパロボTRPG完全版 サンプル敵パイロットデータ